大学駅伝記録室

計算のしかた

黄色の行は早稲田の工藤慎作選手で計算した例です。

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トラックの力を決める

5000mと10000mの自己ベストを比べ、速いほうをその選手のトラックの力にします。5000mは2.085倍して10000mに直します。距離が2倍になるとタイムは2の1.06乗倍になるという、Riegel(1981年)の式です。

トラックの力 = min( 10000m , 5000m × 2^1.06 )
工藤選手:5000m 13:38.67 × 2.085 = 28:27(10000m 28:31.87 より速いので、こちらを使う)
2

記録を10000m相当に直す

駅伝の区間タイムやハーフの自己ベストも、同じ式で10000mのタイムに直します。

10000m相当 = タイム ÷ (距離km ÷ 10)^1.06
工藤選手のハーフ:1:00:06 ÷ 2.2065 = 27:14(式から出すとハーフは 1:02:46 のはず)
3

ずれを出す

トラックの力との差を%で出し、同じレース・同じ区間を走った選手のまん中を引きます。こうするとコース・天気・距離の差が消え、トラックの記録の割に速かったか遅かったかだけが残ります。マイナスが速い側です。故障明けの1本に引っぱられないよう、±6%で打ち切ります。

ずれ = ln(10000m相当 ÷ トラックの力) × 100 − 同じ区間のまん中
工藤選手のハーフ:−4.34 − (−0.58) = −3.76%
4

記録を5つの箱に分ける

  • 短いロード:13km以下の区間(出雲、全日本1〜6区)
  • 長いロード:17km以上の平地(箱根の平地、全日本7・8区、箱根予選会、ハーフの自己ベスト)
  • 山上り:箱根5区 山下り:箱根6区
  • 寒い日:長いロードのうち、箱根の平地で気温が8℃未満だった区間
5

本当の個人差を測る

1本のずれには、調子や集団走のブレが入っています。そこで、同じ選手が別のレースで出したずれどうしがどれだけそろうか(共分散)を測ります。そろう分が選手の特徴で、そろわない分がその日のブレです。卒業生も含めた記録を使います。

箱本当の個人差1本のブレ記録の本数
短いロード(13km以下)±1.05%±1.41%1,031
長いロード(17km以上の平地)±1.06%±1.75%3,339
箱根5区(山上り)±1.56%±1.78%136
箱根6区(山下り)±0.88%±1.51%138
寒い日(箱根の平地で8℃未満)±0.91%±1.53%418

箱どうしの相関:短いロードと長いロード 0.79、山上りと長いロード 0.67、山下りと長いロード 0.76、山上りと山下り 0.06。

6

本数に応じて0に寄せる

走った本数が少ない選手は、たまたま速かった1本で上位に来ないよう、ずれを0に近づけます。ブレと個人差の大きさから計算する方法(BLUP)で、ある箱の記録からほかの箱の値も推し量ります。

推定値 = Σ Hᵀ ( H Σ Hᵀ + R )⁻¹ y

Σ:個人差の共分散、R:1本のブレ、y:その選手のずれ、û:推定値です。

動画の「1本なら30%、3本なら57%」は、1つの箱だけで見たときの目安です。

7

特性にする

特性計算本当の個人差測れる選手
ロード型/トラック型(短いロード+長いロード)÷ 2—記録が1本以上
長い区間長いロード − 短いロード±0.68%両方の箱に記録がある選手
山上り5区 − 長いロード±1.16%5区を走ったことがある選手だけ
山下り6区 − 長いロード±0.69%6区を走ったことがある選手だけ
寒さ寒い日 − 長いロード±0.15%差が小さく見分けられないので、一覧には出していません

一覧の「ロード型」は−0.5%以下、「トラック型」は+0.5%以上としました。この線はサイトの分類のために置いたものです。

8

タイムを予想する

箱根の基準は2024〜2026年の箱根で、そのレースの時点で出ていた自己ベストだけを使って作りました。あとで更新したベストで割ると、基準が遅めに出るためです。

平地21.3km = トラックの力 × 2.13^1.06 × exp( (-0.70 + 長いロードの値) ÷ 100 )
5区・6区 = トラックの力 × 2.08^1.06 × exp( (基準 + 山の値) ÷ 100 )

基準は5区が +14.12、6区が -6.07 です。

工藤選手:トラックだけ 1:02:58 → ロードの力も入れると 1:02:13(トラック順位 56位 → 強さ順位 19位)
9

チームのくせを足す

前の3年の箱根で、チーム全体が予測より何%速く走ったかを出し、くせの大きさ(同じチームの別の年どうしの共分散)に合わせて0に寄せます。大学のページの予測にだけ入っていて、選手の強さ順位には入っていません。

10

箱根を予測する

  • 区間の並び:大学ごとに、10区間の合計がいちばん速くなる10人と区間をハンガリー法で選ぶ(留学生は1人まで)
  • 区間の基準:2024〜2026年の区間ごとのまん中
  • 山が初めての選手:5区は+1%、6区は+0.6%遅いとみなす(個人差1つ分ほど)。5区・6区には山が得意な選手が選ばれるので、その平均を初めての選手に当てはめると甘くなるためです
  • 1万回:選手ごとに1本のブレと見積もりの不確かさを、チームごとに当日のブレ(±0.3%)を入れる

ハーフの自己ベストと予想がちがう理由

平地21.3kmの予想はハーフの自己ベストから計算したものではありません。出発点はトラックの力で、ハーフは「トラックの割に速いか」を測る記録の1本として入っています。

  • 距離がちがいます。21.3kmはハーフより長いので、60分の選手なら約37秒遅くなります
  • 1本の効き目は小さくなります。1本の記録には±1.75%ほどのブレがあるので、ほかの記録と合わせ、本数に応じて0に寄せています
  • 自己ベストはいちばん良かった日の記録で、予想はふつうに走ったときのタイムです
選手ハーフの自己ベスト21.3kmに直すと予想差記録の本数
S・キップケメイ日本 4年59:491:00:261:00:28+2秒1
野中 恒亨國學院 4年1:00:511:01:281:01:31+3秒9
工藤 慎作早稲田 4年1:00:061:00:431:02:13+91秒11
村上 響駒澤 4年1:01:461:02:241:03:34+70秒5
柴田 侑城西 4年1:06:141:06:541:02:48−246秒6

全体では大きくはずれていません。ハーフを21.3kmに直した値と予想の差は、在学生639人のまん中で+0.40%です。実際の箱根の平地の区間627本も距離をそろえると、レース前のハーフの自己ベストとの差のまん中は+0.21%でした。ベストより速く走った本は46%です。

ハーフだけで予測すると当たるかも確かめました。2024〜2026年の箱根の平地で、レース前にハーフの自己ベストがあった270本の誤差です。同じ区間の中で、選手どうしの速さの差をどれだけ当てたかを比べました。

予測のしかた誤差
ハーフの自己ベストだけ±2.05%
トラックの自己ベストだけ±1.90%
タイプ分け(いまの予想)±1.69%

ハーフが飛び抜けて速い選手について予想が遅すぎないかは、まだ確かめていません。

この計算の限り

  • 数字はすべて試算です。1本の記録には±1.75%ほどのブレがあります
  • 山の得意・不得意は、5区・6区を走ったことがない選手については測れていません
  • 箱根予選会はチームで集団走をするので、トラック型の選手ほど遅く出やすくなります
  • 自己ベストは2026年11月2日に取得した値です。その後の記録会の結果は入っていません
  • 区間の中のペース配分、当日の気象、当日変更、故障の情報は入っていません
  • 選手は大学名と氏名で照合しているので、表記の違いで記録がつながっていない場合があります